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例数が多いほどその試験結果は信用できるのか?

医薬品の最終結果は二重盲検比較試験でプラセボ又は実薬対象に有意差を持って勝つことです。そのためには例数さえたくさんあれば意味があるのでしょうか

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最近は大規模試験が行われていることからこの薬は信用できるという話が多くなっています。少なくとも厚生労働省の新薬の承認審査では、有効性をプラセボあるいは実薬対象との二重盲検比較試験によって、有意差を持って高いというメリットが示されていること。

副作用の頻度が高く、有効性のメリットを消してしまうようなことが無い。この二つの条件を満たした場合には、厚生労働省は新薬の製造販売を許可します。

有意差とはある検定手法の元でその答えが間違っている可能性です。その可能性が5%以下であれば有意差があるといいます。最近では正確なパーセントを表示することが求められています。

有意差ともう一つ意味がある指標としては検出力があります。検出力とはその有意差が出る可能性です。一般的には80%がメドとされています。

有意差と検出力はどうやって決めるのカモ

有意差

有意差は2種類の結果の差が偶然の確率を求めることになります。それには統計量というのを用います。この統計量を求める方法が統計手法です。実際のデータから統計量を求めてそこから、それが偶然で起こる確率を求めます。

これが有意差の求め方です。統計量の計算方法によって、t検定やF検定やTurkey検定の様に統計手法が変わります。

実際に差があるのにないと計算してしまう可能性をベータとして、検出力は1-ベータで表します。有意差は間違っている確率を、検出力は正解である確率を示します。

当然のことながら、例数が大きくなると有意差が出やすくなり、検出力は100に近づきます。

症例数

症例数を設定するためには第3相試験を行う前の試験からプラセボ(あるいは実薬対象)というモノの差とバラツキを推定します。

そして、統計手法を決めて、その有意差が5%以下になり、検出力が80%以上になるような症例数を、統計量を求める数式から逆算することによって、症例数を求めます。

かつて試験の責任者は「そんな夢みたいな症例を集めるなんて不可能」、統計責任者の「それなら統計を利用するのを止めとけ」とよく争いになっていましたが、国外で症例数を稼ぐことによってそんな話は、ほとんどなくなりました。

現実的に存在するのは、「日本中に存在する患者を全部試験に組み入れても足らない場合です」この場合には、厚生労働省も統計的な話にはそれほど深く入りません。稀少疾患と呼ばれる分野です。

症例をたくさん集めることができれば、有効率55%の標準治療に対して新薬が56%の効果があるとします。2万例を超える症例を集めることができればこの試験は有意差をもって効果が高い結果が99%以上の可能性で出てきます。

しかし、これは臨床的には全く意味がありません。

でも有意差があったら薬になるカモ

44%の人には効果ありません。統計学的には意味があっても、医療現場では不必要な薬の可能性が高くなります。厚生労働省でも効果のメリットがあるとは判断しません。(副作用が全くなくなるというメリットがあれば別の議論になります)

医療現場では統計の意味はないのか?

それでは統計は意味がないのかというとそうではありません。使い方の問題です。現在は平均値の差の95%信頼区間が利用されています。

例えば平均値の差が10%あればこの薬を使おうと思うかもしれませんが、95%信頼区間が-10%~10%出あることが分かると使うことがなくなるでしょう。

信頼区間が0をまたがないということが重要です。これは平均値を理解するためには非常に重要な指標です。計算方法は平均値プラスマイナス1.96×標準誤差で求めます。

例えば新聞で貯蓄の平均値が出ていて我が家の貯金はなんと少ないのだとびっくりすることがあります。ソフトバンクの孫さんの何億という貯金量と貯金が240万円程度の人たちもいますし、貯金が0の人もいます。

仮に100人に貯蓄額を聞いた場合、孫さんの貯金が5億円、240万円貯蓄している人が80人、貯金が0円の19人の平均貯蓄量は5192万円になってしまいます。99人の人は自分の貯金は世間の1/20しかないのかとがっくりきます。

この場合統計学的には平均値は全体を代表する値としては不合格として扱い、順番に並べて50番目と51番目の平均である中央値である240万円か、一番その値をとっている人が多い最頻値である240万円とすべきです。

そうするとびっくりする人は減ると思います。社会面記事を書いている人々は統計というモノを全く知らないと思われます。(あるいは、わざとやっているのかもしれません)

まとめ

医薬品の箱には添付文書というモノが同封されています。また、MRの人に頼むと医療用医薬品に関しては医薬品インタビューフォームを持ってきてくれます。

どちらにも臨床試験の結果が記載してあります。特にインタビューフォームには詳しく書いてあります。厚生労働省のチェックを受けているので間違いはほとんどありません。

製薬会社の人は2月から3月になると夜遅くまで残業している人がいるカモ

医薬品インタビューフォームは毎年3月末までに改訂する必要があります。重篤な副作用が出たときには緊急文書を回すけれども、その年の3月にはインタビューフォームに記載する必要があります。

また、緊急文書を出すほどではないが、会社や厚生労働省に報告のあった副作用の件数を改訂する必要があります。副作用の少ない薬だとあまり業務は増えませんが、世界で売っている薬は、世界での副作用をすべて記載する必要があるので大変な業務量となります。