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「急いでいるんだよ!」と患者さんが言う。でも、簡単に薬を渡してはいけません。

薬局は処方箋通りに薬を渡すだけでの場所ではありません。重大な責任/義務があります

薬局でに来る患者さんの中に

「急いでいるんだよ!」
「早くしてくれ!」

とおっしゃる患者様がおられます。

その要望・クレームの程度にもよりますが、比較的軽く、それほど強いクレームでない場合は、その患者さんに納得していただくようにお話されると思います。

しかし、一切お話を聞いてくれない、「早くしてくれ!」と1点張りの患者さんもおられるかと思います。そんなとき、みなさんはどうされていますでしょうか。

急いで処方箋通りに調剤して、何も説明せずにお薬をお渡しし、会計を済ませて、早く帰っていただくという対応をしていないでしょうか。

事なきを得ずにクレームを処理するという意味では、この対応で問題ないのですが、実はこの対応はダメな対応なのです。

法律的なこと、患者さんの安全性に関すること、場合によっては訴訟にまで発展する可能性もあるということから、一緒に考えてみましょう。

薬局に来る患者さんの気持ちとは?

これまで1度も病院で診察を受けたことがないという人は、ほとんどいないと思います。

大学病院のような大きな病院、市内にある市民病院、近所にあるクリニックなどいろいろな病院がありますが、共通していることは1つですよね。

待ち時間が非常に長い…カモ

もちろん、病院の規模によって多少の差はあります。例えば、クリニックの場合、30分~1時間程度待ちます。

大学病院であれば予約がない場合、朝一番に受付をしても昼から診察というケース、もともと予約をとっていた場合でも2~3時間待つことは良くあります。

診察を受けるまで1時間以上かかり、風邪や胃腸の調子が悪いなど軽度な場合、診察時間は非常に短く、5分程度ということもよくあります。

診察時間が短いことをどのように感じるかは人それぞれ違いますが、待ち時間が長いことを良しと感じる人はいないと思います。

今はほとんどが院外処方箋であるため、このような気持ちのまま薬局にこられる患者さんが非常に多いです。したがって、イライラした気持ちでこられる方も多いです。

患者さんがこのような気持ちで薬局に来ているということを理解することが、薬剤師として非常に重要だカモ。

それ以上イヤな気持ちにさせないようにすることが、最低限のことだカモ。

折をみて状況をお知らせする、丁寧に対応するなど、心のこもった対応が重要カモ

薬局において何も説明せずに、お薬を渡してよいのか?

イライラした気持ちで薬局を訪れた患者さんの中には「急いでいる」「早くしてくれ」というリクエストを出される患者さんもおられます。

軽いリクエスト程度であれば、それほど気になりませんが、中には暴言に近いクレームのような場合もあります。

このようなクレームを少しでも早く解決するために、急いで調剤をして、説明をせずに薬を渡すなんてことはありませんでしょうか。

クレームを対処するという意味では、これで問題ありません。このような対応をしている薬剤師さん、薬局は少なくないと思います。

しかし、この対応は薬剤師法を遵守しておらず、薬剤師法違反に該当します。

薬剤師法には、以下の記載があります。

 薬剤師は、調剤した薬剤の適正な使用のため、販売又は授与の目的で調剤したときは、患者又は現にその看護に当たっている者に対し、必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。

※参照(情報の提供及び指導)第二五条の二

したがって、薬剤師はどんな状況であっても患者さんやその看護している人に対して、薬を服用する際の注意点などの指導を行わないといけないわけです。

また、薬剤服用歴管理指導料という調剤報酬を、原則すべての患者さんに対して算定していないでしょうか。何も伝達せずに(服薬指導をせずに)薬だけをお渡している場合、薬剤服用歴管理指導料は算定できません。

その理由は、厚生労働省から出されている以下に記載があります。(一部を抜粋)

※参照 調剤報酬点数表に関する事項

薬学管理料
区分10 薬剤服用歴管理指導料
イ 患者又はその家族等と対話することにより、当該患者の服薬状況、服薬期間中の体調 の変化、残薬の状況等の情報を収集し、その要点を薬剤服用歴の記録に記載するととも に、これに基づき、投与される薬剤の適正使用のために必要な服薬指導を行うこと。

「適正使用のために服薬指導を行うこと」と決められています。

薬を渡すだけで必要な情報を提供せずに、薬剤服用歴管理指導料を算定している場合、不正請求に該当し、行政処分の対象となります。

行政処分まではされないだろうと思う薬剤師さんもいらっしゃると思います。
いえ、本当に行政処分が行われます。

厚生労働省から2014年度の保険医療機関、保険薬局の指導・監査等の実施状況がまとめられ、公表されています。

その結果は1薬局が保険指定の取り消し処分、8人が保険薬剤師の登録取り消し処分を受けたとのことです。

また、服薬指導を怠ったことで、患者さんに重大な副作用が発生し、健康被害などが発生しした場合、責任が追求され裁判を起こされてしまう可能性がないとは言い切れません。

クレーム対応は薬局運営をする上でとても重要だカモ。重要だと考えるからこその対応であっても、それが法律に違反することになる。

それは薬剤師として絶対にしてはいけない。それをもう一度認識する必要があるだカモ

私が体験した理不尽な患者さん~みんなの口コミ

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頑固な患者さんへの対応方法で効果があると感じたもの

年齢 27歳
性別 女性
職業 調剤

Q.どのようなことがありましたか?

レセコン・薬歴画面を見て、初めてご来局された患者さんでした。

初回は保険証を確認して、問診票(アレルギー歴や病歴などを確認するようなものです)を記入いただき、またジェネリックでのご用意をしていいかなど確認事項がたくさんあります。

その患者さんは「初めてじゃない」と言い張り、かたくなにこれらの対応を拒まれました。ジェネリックを聞いてもだんまりで、併用薬も結局分からず。

投薬時も何も言わず薬を奪うように去っていきました。対応は私ではなかったのですが、強烈だったため記憶に残っています。

Q.そのような状況になった場合や、状況を作らないためにするべきこととは?

その時は何も話してくれなくても、何度かお話ししているうちに態度が柔らかくなってくる方もいます。

併用薬もわからずお渡しするのは問題ですが、後からでも聞き出せればそのほうがいいです。そのため、初回どんなに頑固でかたくなな患者さんでも、こちらはむきにならず笑顔で接するようにしています。

次回来た時は少しは機嫌がいいかもしれませんし、問診を書いていただけなくても大人の方なら口頭で十分確認可能なものもあるからです。

そのため、こういった患者さんには柔らかい対応を心がけています。

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自分が何よりも優先されるべきと考えている人に遭遇

年齢 20代
性別 女性
職業 ドラッグストア

Q.どのようなことがありましたか?

繁忙店で働いているため、常にお客さんの対応に追われている現場で働いています。

レジ待ちの列は絶えずいつものようにレジ業務をしていました。次のお客さんを呼んだ時にレジ待ちの列とは違うところから別のお客さんが割り込んでレジに入ってきました。

その方が割り込んできて言った一言が「クーポン券ちょうだい。」と言ってきました。これだけでもおかしいのですが、順番に待たれていたお客様の対応をしなければならないので「少々お待ちいただけますか。」と言っても聞く耳なしです。

「なんで並ばないといけないの。私は何年もここのお店に通ってるんだよ。」だから何だ、という感じですね。少し横にズレてもらい、きちんと並ばれていた方を優先に対応をしました。

Q.そのような状況になった場合や、状況を作らないためにするべきこととは?

いつも行列ができている状況を改善することができればこのようなことは起こらないと思います。

また、レジ業務以外のフリーのスタッフを最低1名はいるように人員の確保ができれば、そういったイレギュラーなお客様の対応も可能となります。

この方以外にも急いでいるからといって平気で割り込みをしてくる人や、レジで割引してくれとゴネる人、要指導医薬品なのに大量買いできなくて怒ってくる人など。様々な方がいらっしゃいます。

こちらの人員にももう少し余裕があれば宥めることができるのかもしれません。

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生活保護から抜けた患者さんが豹変

年齢 29歳
性別 女性
職業 調剤

Q.どのようなことがありましたか?

私は、周りに生活保護の方が比較的多い地域の調剤薬局に勤務していました。

その中で60代の男性が今まで生活保護でしたが、娘さんの扶養に入ったことで生活保護から外れた時に起きたトラブルです。

生活保護であれば基本的には医療費の支払いはありません。もともとその患者さんは「俺は国から選ばれた偉い奴だから生活保護がもらえてるんだ」「俺は偉いんだ。すごいだろ。医療費が無料なんだぜ」などと生活保護であることを自慢し、毎週薬局に来ていました。

しかし生活保護から外れ、支払いが発生した際に急に怒り出したのです。保険が変わったことや、支払いは義務であることなど角が立たないように説明したものの全く納得してくれずしまいには金額を踏み倒すようになりました。

薬局としてはそれを許していたわけではありません。最終的に踏み倒しの金額が10万円を超えたとき店舗では手に負えなくなったため会社の常務に対応をお願いしましたが結局支払いに納得してくれることはありませんでした。

Q.そのような状況になった場合や、状況を作らないためにするべきこととは?

医療費の支払いができない場合、理由は様々あると思います。

大抵の場合は支払いをしていただけるように誓約書を書いていただいたりして患者様に納得していただきますが、今回のケースのように全く支払いの意思がなく悪質な場合にはその薬局の管轄である市や対象の機関に相談することが求められます。

サービス業とは言っても無料でサービスを提供するわけにはいかないのでそこはしっかり線引きをして患者様に対応すべきだと思います。

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まとめ

患者さんへのクレーム対処(サービス)として薬を渡すだけという行為は、薬剤師法に違反しており、ケースよっては行政処分を受けます。

良かれと思って行った行為であっても関係はありません。法律を守って仕事を行うことが、患者さんだけでなく、ご自身をも守ることができる唯一の方法です。

今一度、薬剤師法などの法律や通知などをお読みいただき、薬剤師の責務などを確認していただくことをおすすめいたします。