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1回800万円の肺がんの薬は健康保険の財政影響を与えるのか

個人負担は上限があるので、あまり問題になりませんが、健康保険財政には大きな影響を与えます。各国の保険も紹介しながらどうすべきかを考えます

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日本の保険制度は、国民保険と各企業あるいは企業グループが作成する協会けんぽと後期高齢者保険の3種類があります。後期高齢者保険は協会けんぽと税金が利用されています。

高い薬がでて、日本の保険財政が破綻するってほんとカモ

自己負担は原則3割となっています。ただし70歳から74歳までが2割、75歳以上が1割となっています。義務教育就学前は2割となっていますが、市町村によっては税金を使ってそれよりも低いものとなっています。

収入は報酬の10%(上限あり)を労働者と会社が折半で払います。国民健康保険は給付金16.4%が税金でまかなわれています。保険料は市町村によって変わります。

個人事業主は収入金額から必要経費を引いた所得金額から33万円を引いた価格が基準額になります。均等割りと所得割を足すと、家族構成によって変わりますが、所得額の2割弱になります。どちらにも上限があります。

ということは景気がよければ給料も上がるので、保険収入も増加し、保険財政もよくなるカモ

保険財政を壊す可能性のある薬

ここで問題になってくるのが、新しく薬価収載されたオプジーボ点滴静注と言う薬です。この薬は2015年12月に肺がんに対して使うことがありました。この薬が1回の治療が800万円かかることが問題になっています。

今までがんの薬には抗体医薬という高価なものがありました。しかし、この抗体医薬というのはがんが抗原を持っていないと効かないので、使用頻度が高まらず、あまり問題になりませんでした。

2000年頃に日本で、がん細胞には、人の免疫機能をすり抜ける機能を持っていることが分かりました。世界中でこの免疫機能をすり抜ける機能を止める薬の開発競争が始まりましたが、日本の会社の薬剤オプジーボが世界で初めて使えるようになりました。

最初は「悪性黒色腫」という、数少ないがんに対するときだけ薬価収載されていましたが、今回「肺がん」使えることになりました。

今までのがんの免疫機能をすり抜ける部分を抗体によってとめる薬剤なので、高価な薬剤となっています。

個人にとっては所得によって少し違いますが、病院に払う価格は上限があります。残りは国民保険を収集している市町村か、協会けんぽが支払うことになります。現在のところ多くの市町村や協会けんぽはほとんど赤字です。

オブジーボはどれぐらい使われるのか

医療の専門家の予想によると2兆円近くになります。そのうち自己負担はせいぜい1割前後ですので、日本の医療費の2割近くになります。

どのような対応策が考えられているのか

厚生労働省は薬価収載時に推定の売上値をメーカーに提出させ、それよりも実際の販売量が多い場合には薬価を引き下げることができます。

日本以外でもオプジーボは販売されるカモ

各国の対応

イギリス

イギリスでは抗体薬剤のように高価な薬剤は、費用対効果を検討し、費用対効果の点で問題のある薬のお金は支払われません。これは一人の患者で計算するわけではなく、例えばオブジーボの場合には、統計学的にみると生存期間は有意に延長しているけれども、2年後の生存率をみると、対照薬と同じく生き残った人はいません。

従って、大人数でみた場合には費用対効果はないに等しいと言うことで薬価は認められないと言われています。ただし、半年で死ぬ人が9か月生きる可能性はあるので、自由診療は可能になると言われています。その人にとってその3か月でやるべきことがあるかもしれないからです。

フランス

フランスではかかりつけ医の紹介がないと他の病院を受診することができません。かかりつけ医では出来高払い方式ですので、医院には問題がありませんが、公的病院は総枠の予算が決まっているので、病院が赤字を背負うことになります。

スウェーデン

全額、税によって保険財政がまかなわれているので、国民は医療費の負担はありませんが、薬価に対しては非常に査定が厳しいことで有名です。

ドイツ

ドイツでは日本とほぼ同じ保険方式ですが、高価な薬剤に対しては日本と異なる方法が検討されています。高価な薬剤に関しては、最低限の効果を定め、治療の結果その効果を得られなかった場合には、製薬会社が医療費を返還するという仕組みです。

がんに対する薬剤が高価になったことから検討されている方法ですが、今のところ法案を作成しているところで、この法案の重要度が移民問題とEUの仲間割れの問題でこの法案の優先順位はあまり高くなっていません。

日本では結局どうなるのカモ

日本の今後の対応

マスコミ、肺癌学会、内科学会が騒ぎ出したので、今度の薬価収載のときに再算定が一番の落としどころかと思います。しかしオブジーボが止めることをできる免疫排除機能は一つだけであることが分かっています。もう一つの免疫は助機能を止める薬剤ももうすぐ薬価収載されるかもしれません。

オブジーボの腫瘍縮小率は30%程度しかありません。他の強く副作用のある薬剤を組み合わせた場合には50%を超える場合もあります。強い治療法で、始めから副作用予防薬を併用するという手もあります。

また、オブジーボと新しい薬を併用すると腫瘍縮小率は50%を超えるという学会報告がありました。外国人の報告でしたので生存率はどうなるかに関しての質問に関して私の聞き違いがあるかもしれませんが、「あまり寄与しない、なぜなら、がん細胞は進化するから」と聞こえました。

大規模な試験の報告がもうすぐきちんと論文の形で報告されると思いますので、気になる方はそちらで確認してください。