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トローチ剤一つでも、服薬指導を誤ると危険なケースがあります。

風邪を引いて咽頭炎などのどの症状があるときにトローチ剤を処方されることが多いですが、正しく使用することで十分な効果を得るとともに、危険を回避しましょう

季節の変わり目の風邪というものは、高熱が出るわけでもなく、どことなく体がだるい、軽い頭痛がする、咳がでる、のどがイガイガする、のどが痛いという比較的軽い症状が発現することが多いという特徴があります。

そのような症状で病院を受診すると、抗生物質を治療の中心において、解熱鎮痛薬、去痰薬、鎮咳薬が処方されることが一般的です。

さらに喉の症状が強いようなら、トローチ剤(SPトローチ)が処方されることが多いです。

近年このトローチ剤の処方が増えてきています。トローチ剤そのものは、かなり昔から存在しているものですが、その使い方をしっかりと理解している人はどれくらいおられるのでしょうか。

誤った使い方をすると、危険な症状やケースを発生させてしまう可能性もあります。

ここでは、これからの時期、使用が多くなるトローチ剤について、使い方を理解していただくとともに、危険性も把握することで、適正使用につなげていきましょう。

トローチ剤の処方が増加してきた背景にあるものとは?

30歳代前後以上の薬剤師さんにとって、風邪などの炎症止めと聞いてイメージする医薬品があります。

そうです。武田薬品工業が製造販売していた「ダーゼン錠」と、日本新薬が製造販売していた「レフトーゼ錠」です。

特に「ダーゼン錠」は風邪の処方には、必ずといって良いほど、常にセットで処方されていました。

しかし、厚生労働省の規定から再評価のための臨床試験を実施しましたが、有効性においてプラセボ(偽薬)との間に有意差を認めなかったという結果から、武田薬品が自主回収することになり、製造も中止されました。

※出典:消炎酵素製剤「ダーゼン®」の自主回収について

その後、注目された医薬品が「レフトーゼ」です。
レフトーゼ自体は、炎症止めとしてはダーゼンの処方数やシェアに及ばないまでも、存在はしていました。

レフトーゼの欠点は、その有効成分が卵白由来の成分であるため、卵白アレルギーや卵アレルギーを持つ人には使うことができないということでした。

レフトーゼダーゼンという大きなシェアをもつ治療が自主回収となったことで、息を吹き返しました。

しかし、レフトーゼもダーゼンと同じ作用を持つために再評価の対象とされ、臨床試験を実施した結果、医療上有用は認められない、つまり効果がないというデータから、自主回収・製造販売中止となりました。

※出典:リゾチーム塩酸塩製剤「レフトーゼ®」の販売中止と自主回収のお知らせ

臨床試験の結果を見ると、ダーゼンやレフトーゼの効果が十分でないことがよくわかるのだカモ。しかし、これまでは習慣的に処方されていたようだカモ。

医療費が莫大な額になっている現在、効果などを再評価して有用性がない医薬品を見極めていくことは重要なことなのだカモ。

トローチの効果とは?

ダーゼンやレフトーゼの自主回収によって、その代替医薬品として使用されることが、さらに多くなった医薬品がトローチです。

トローチの主な作用は、口腔内と咽頭の殺菌です。有効成分は消毒剤であり、代表的なトローチである「SPトローチ」の有効成分は、「デカリニウム」です。

「デカリニウム」の作用機序ですが、「デカリニウム」は陽イオン界面活性剤であり、細菌に作用することでタンパク質を変性させます。

細菌の細胞は、人間と同じでたんぱく質でできています。デカリニウムによってたんぱく質の変性が引き起こされると、細胞を維持することができなくなり、消滅つまり殺菌されてしまいます。

風邪などの際には、内服の抗生物質が処方されているため、咽頭の症状にももちろん効果があります。

しかし、咽頭の症状が顕著に認められる場合は、トローチを処方して、その部位を積極的に殺菌して、炎症を抑えるように治療がなされます。

この働きを利用して、トローチはダーゼンやレフトーゼといった炎症止めに取って代わるように処方数が多くなりました。

トローチの使用方法とは?

これまでのご説明した内容から、口腔内や咽頭の殺菌を目的としていることがご理解いただけるかと思います。

したがって、使用方法は、口の中で長時間とどめておいて、唾液によって溶かす必要があります。

比較的錠剤が大きいため、噛み砕きたくなりますが、噛み砕いたり、飲み込んでしまっては効果がありません。必ず、ゆっくりと溶かすことを忘れないでください。

口の中に長くとどめておくことで、ゆっくりと薬剤が溶け出すことになるため、その分より良い殺菌効果を発揮することができます。

ちなみにトローチ剤の多くには、中心に穴が開いていますが、これは何を目的としたものであるかご存知でしょうか。

唾液に触れる表面積が大きいほど、薬が溶け出しやすいという特徴もあるかと思いますが、本来の目的は、間違って飲み込んでしまい、喉に詰まったというような緊急時でも呼吸ができるように工夫して設計されたものなのです。

つまり、窒息を予防するためのものです。真ん中に穴が開いているからといって、飲み込んだ場合窒息する可能性がまったくないというわけではありません。

使い方を間違えると、非常に危険な状況に陥ることもあるということをご理解ください。

人間は、ものを口の中に入れると噛み砕きたくなり、飲み込みたくなるものなのだカモ。

しかし、薬剤師は医薬品のスペシャリストであり、医療の担い手であるため、適切な使用方法を指導することが非常に重要なのだカモ。

適切な服薬指導を行う必要があることが、再認識できるのではないでしょうか。

トローチの作用は、消毒作用であり、薬効としては非常に単純なものであるため、服薬指導を蔑ろ(ないがしろ)にしているケースもあるかと思います。

しかし、よく考えてみてください。使用方法を間違うと適切な効果が得られないだけでなく、危険な状態も引き起こしてしまいます。

つまり、服薬指導が非常に重要ということです。医薬品の効果を説明し、どのようにしてそれが作用するのか、あるいは作用させるのかをしっかりと説明し患者さんに理解していただく、そして医薬品の適正使用につなげる。

これこそが、服薬指導の最も重要なことだと思います。服薬指導の重要さを再認識していただければと思います。