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高齢者への「個別ケア」とは?高齢者介護施設での取り組み

この記事の監修者 池田 正樹(介護支援専門員 介護福祉士 社会福祉主事)
池田 正樹 山形県出身。大学卒業後、約14年間福祉の最前線で活動している。介護支援専門員、通所介護・有料老人ホームの生活相談員、認知症対応型共同生活介護の介護員、福祉用具専門相談員、訪問介護管理者等を経て、現在は在宅の要介護者を支援する介護支援専門員として勤務。障がい者・児の資格もあり、福祉全般に幅広く経験・知識を持つ。 続きを読む
最近、高齢者施設での「個別ケア」が重視されています。では「個別ケア」とはどういうものなのでしょうか。

個別ケア

高齢者介護施設を探している人の中には、「個別ケア」や「ユニットケア」といった言葉を聞いたことがある方も多いですよね。

しかし、

「そもそも、個別ケアってなんのこと?」
「ユニットケアってどういう体制のことを言うの?」

といった疑問を持つ方も多いでしょう。

そこで、ここでは高齢者介護施設の個別ケアとはどういったものなのか、導入され始めたユニットケアとは、どんな体制でケアを行うのかなど詳しくご紹介します。

これを読めば、今後高齢者介護施設が目指すケアとはどんなものなのか、理解できますのでぜひ読み進めてくださいね。

そもそも、個別ケアって?

介護自体、本来であれば個別ケアといえます。

入所してくる方の健康状態はそれぞれ異なるため、ひとりひとりに合った介護やケアを行えるよう、工夫をしながらケアをしていくのが介護の理想的な形と言えますね。

個別ケアとは、利用者を一番に考え大切にしたケアを行うことを言います。

しかし介護を行うには、施設の組織やチーム、利用者の集団生活における個々に合ったケアやカリキュラムを考える必要があります。

人手不足などといった理由から、個別ケアを完全に行うのは難しいのが正直なところでしょう。

高齢者施設でのケアについて

多くの高齢者施設においては複数の人との共同生活です。

利用している高齢者の健康状態に応じて介護職員がその介助や介護を行います。

施設によって介助や介護などケアの仕方に違いがあり、施設内の設備も違います。

在宅の高齢者に行う対応は、例えば訪問介護は1対1のサービスですし、デイサービスで言えば1人1人違うケアマネジャーさんが作成する「居宅サービス計画書」を元に作成された「個別支援計画」によってサービスが提供されています。

在宅サービス側も事業所の数が多く、サービス業的側面も強いことから、利用者の獲得維持に必死に取り組んでいます。

まず、利用者のそれぞれ違うニーズを叶えようと努力することによって、個人を重視する個別ケアについては自然と提供されやすい環境にあると言えます。

それに対し、入所して介護サービスを受ける施設サービスでは、職員1人当たりの要介護者数が多いため、効率を優先して食事や入浴、日課などを介護職員の都合に合わせた時間で行う画一的な集団ケアになりがちです。

また、サービス内容を決定づける「施設サービス計画」を作成する施設ケアマネも、法律上では100人まで1人で担当することができます。

在宅のケアマネは1人40人程度ですから、1人当たりのプランニングにかける時間には歴然とした差が出ますよね。

更に言えば、特別養護老人ホームをはじめとした施設サービスは入居待機者が多く、一度入所してしまえば亡くなるまでずっと利用し続けることが殆どです。

背に腹は代えられない入居希望者としては、1日でも早く入りたい(家族が入れたい)と考えているケースが多いです。

ここまで来れば完全な売り手市場であり、こうなってくると、なかなか個別ケアに取り組むのは難しい現状もあります。

※参照:厚生労働省「補論2 ユニットケアについて」※2015年高齢者介護 高齢者の尊厳を支えるケアの確立

高齢者施設では、複数の利用者に対して限られた人数の介護職員が交代で介助や介護を行うことになるので、その人専任の介護職員が常時付きっきりでいるといったものではありません。

介護施設で個別ケアを実現するためには?

ここまで、高齢者施設での個別ケアは、現状では難しいというお話しをしてきました。

その個別ケアを実現させるために、最近ではユニットケアを取り入れている施設も多くあります。

では、そのユニットケアとはどういったものなのか、お話ししていきましょう。

画一的なケアからユニットケアへ

ユニットケアが生まれるまで、多くの高齢者を介護するためには、個別ケアよりもどうしても効率性を優先した介護が行われてきました。

いわば、施設の都合に合わせて介護を行ってきたということです。

たとえば、極端に言えば早く食べおわるよう次から次に口に食事を運ぶ、羞恥心やタイミングなどを無視した入浴など、言葉にするとひどいと感じるようなケアが実際は行われることが多いのが現状でした。

これでは個人を尊重したケアを行われているとは言えませんね。

そこで、2001年に厚生労働省が「完全個室のユニットケアへの切り替え」を発表し、改めて介護とは何か、そして個別ケアとはどんなものなのか、見直すきっかけになったのです。

ユニットケアが個別的なケアを実現する

ユニットケアの特徴としては、次のような4つがあります。

  • 少人数のグループで、担当スタッフが介助やサポートを行う
  • 少人数を専任担当者が当たるので、個性や生活リズムを把握しやすい
  • 利用者との信用関係を気づきやすい
  • 主に個室型が多い

従来型のケアとは違い、完全個室でのケアになるのでプライバシーを守ることができます。

また、担当スタッフが変わらないので、コミュニケーションをとりやすく、体調の変化にも気づきやすいというメリットもあります。

また、少人数体制での個室なので、自宅に近い環境で利用者も過ごすことができるのは、魅力的ではないでしょうか。

個別ケアを進めていくには施設職員の日々の工夫も重要です。 

なぜ、ユニットケアは広まらないの?

ユニットケアには、利用者とスタッフ双方にメリットが大きいと感じますが、今の日本ではなかなか広まっていかない状況にあります。

では、なぜにユニットケアは広まらないのか、そして広めるためにはどうしたらいいのか、お話ししていきましょう。

費用が高い

ユニットケアは基本個室なため、施設を建設するにも従来型に比べて費用がかかります。

そのため必然的に入居費用や利用費用などが高額になりがちです。

特別養護老人ホームを例に、費用をまとめたので次の3つの表を見てください。

【介護費自己負担額】
※特養への入所は基本要介護3からなので、要介護3から表記しています

要介護3 要介護4 要介護5
ユニット型 23,280円 25,290円 27,300円
従来型 20,850円 22,890円 24,870円

【入所費用】

項目 住居費 食費
ユニット型/個室 59,100円 41,400円
ユニット型/多床室 49,200円
従来型/個室 34,500円
従来型/多床室 25,200円

【最低入所費用】

ユニット型 従来型
個室 123,780円~127,800円 96,750円~100,770円
多床室 113,880円~117,900円 87,450円~91,470円

最低入所費用の他に、介護サービス加算などがかかります。

ユニットケアと従来型では、表からもわかるように、毎月のかかる費用に差があります。

いくらユニットケアに入りたくても、毎月の入居費用が高額であると、利用者だけではなく家族や周囲の金銭的な負担も大きく、やむをえず従来型を選択する方も多いのです。

ユニットケア推進のために

ただやみくもにユニットケアを進めるだけではなく、本来の目的である利用者に寄り添うケアを推進しなくてはいけません。

ユニットケアの特性から、スタッフは少人数のチームを作ることになるため、スタッフ間の意見交換や、情報の共通など風通しのいい施設環境を作ることが大切です。

また、スタッフの意識や技術をお互いに高め合うといった環境も必要ですね。

よりユニットケアを推進するためには、国を上げてのユニットケア型の人材育成制度と、施設への助成などを行う必要があります。

国が動き、介護業界がユニットケア推進へと同じ方法を向くことが大切です。

「ユニットケア」イコール「個別ケア」という考え方もあるかもしれませんが、規模に関わらず中身が伴わなければ本当の意味での個別ケアとはいえません。

↓ユニットケアについても知っておこう!↓

ユニットケアをハード面から考えよう/ユニット型施設を解説

まとめ

「個別ケア」とは、特定の介護職員による利用者のケアのことではなく、画一化された介護ケアのことでもありません。

利用者のライフスタイルやこれまでの生き様などを理解した上で、その人らしく柔軟に対応したケアのことを指すものです。

最近では多くの高齢者施設において「ユニットケア」を導入しているところが目立ってきています。

また、一定時間内に決められたことを行うという画一的な従来型のケアから、「個人」を尊重した「個別ケア」を目標にしている施設も増えてきています。

同一施設内での利用者が少ない場合は、目標とされる「個別ケア」にはつながらないことも多々あります。

また、職員の配置や人数によっても利用者に対して十分に対応しきれていないケースもあります。

さらに、職員同士の考え方や適応能力の違いなどによって差が出てしまう場合もあり、対処すべき課題もあります。

少ない人員の中でより細やかな質の高い「個別ケア」を実践するためには、高齢者の日々の介助や介護の状態についての検証や見直し、さらに職員同士の意見の交換や情報の共有などを積極的に行って改善していくという前向きな姿勢が必要とされます。

介護施設の目標や理念、その施設の職員の考え方によって目指す「個別ケア」にも違いがでるかもしれませんね。