盲ろうあ児施設を変えたのは障害児施設の一元化!保育士にも働くチャンスがたくさんある!
保育園でキャリアを積んだ保育士には「障害のある子ども」の保育をしてみたいと考える人がたくさんいます。自分が働いている園に障害のある子どもが入園し、その出会いがきっかけとなって障害児施設への関心を高める保育士も少なくありません。
盲ろうあ児施設も昔からある障害児施設の代表格。近年、盲ろうあ児施設を取り巻く状況は大きく変化しています。施設への転職を考える保育士は、まず「盲ろうあ児施設の現状」について情報を把握しておくことが大切ですね。
今回は、盲ろうあ児施設がどのように変化しているかをお伝えします。まず、盲ろうあ児施設とは何か?を知ることから始めましょう。
目次
盲ろうあ児施設とは何か?どんな子どもが利用するのか?
盲ろうあ児施設と呼ばれる施設は3種類あり、通所する子どもの障害の違い等によって「盲児施設」「ろうあ児施設」「難聴幼児通園施設」に分かれます。
盲児施設とは?
盲児施設は、保護者が養育できないなどの事情がある「視覚障害によって日常の生活が難しい18歳未満の子ども」を保護し、将来的な自立をふまえた指導や支援を行います。
盲児施設は全国的にも数が少なく、設置されていない都道府県も多くあります。地域のニーズがあっても、対応が難しいのが現状です。
ろうあ児施設とは?
聴覚に障害のある18歳未満の子どもが入所するのが「ろうあ児施設」です。子どもの養育が困難な家庭のろうあ児を保護し、日常生活に必要な支援を行います。子どもの年齢によっては職業指導を行うこともあります。
難聴幼児通園施設とは?
音や声などが聞こえづらく、難聴または難聴が疑われる幼児が利用する通園施設です。聞こえない原因を詳しく検査したり、本人に合った療育プログラムを行っています。難聴幼児通園施設に通うことで、難聴を早期発見することが可能になり、早めの対処や療育を受けることができます。

盲ろうあ児施設は非常に数が少なく、どこにどんな施設があるのか実態があまり知られていませんでしたが、近年ちょっとした変化がありました。詳しくは次のコーナーで紹介するカモ!
もう「盲ろうあ児施設」とはいわない?法の改正で名称が変わった!
障害児施設は「障害の種類」によって分類され名称も異なるものでした。2012年に児童福祉法の一部が改正されたことによって「障害児施設が一元化」されることになり、入所タイプまたは通所タイプという施設の形態によって区別されることになりました。
盲児施設・ろうあ児施設は「福祉型障害児入所施設」に変更!
2012年までは利用者の障害種が限定されていましたが、福祉型障害児入所施設では「身体障害・精神障害・知的障害のある児童」と対象の幅が広がったことで、盲児もろうあ児もさまざまな施設を利用できるようになりました。
難聴児通園施設は「福祉型障害児通所施設」に変更!
難聴児通園施設は、盲児施設・ろうあ児施設とともに「盲ろうあ児施設」というカテゴリーの中にありましたが、障害児施設の一元化により「通所タイプ」に分類されることになりました。
障害児通所施設には「児童発達支援」「医療型発達支援」「放課後等デイサービス」「保育所等訪問支援」の4つのサービスがあり、子どもの年齢や障害に合った支援が受けられます。

障害児施設が一元化されたことで、盲児とろうあ児は利用するサービスの選択肢が広がりましたね!特に他の障害もある「重複障害の子ども」にとってはうれしい変化カモ!
福祉型障害児入所施設について具体的に知りたい!
福祉型障害児入所施設を利用するのは、ほとんどが「保護者の養育が難しい家庭環境」の子ども。盲ろうあ児の特性に合った援助をするのはもちろんですが、保護者と離れていることを考慮した支援も必要になります。
福祉型障害児入所施設で受けられるサービスとは?
福祉型障害児入所施設で提供されるのは下記のサービスです。
- 養育が困難な家庭の子ども(18歳未満の障害児)を保護し安全を守ります。
- 日常生活の介助と指導を行います。
- 生活や学習に必要な能力向上の援助をします。
福祉型障害児入所施設にはどのような資格をもったスタッフがいる?
施設では、児童発達支援管理者、児童指導員、保育士、栄養士、嘱託医などがスタッフとして働いています。このうち「児童指導員」になるための任用資格は、社会福祉士、精神保健福祉士、小中高の教員免許などがあります。
福祉型障害児入所施設で働く保育士の仕事内容は?
保育士は「福祉型障害者入所施設」で主に下記のような仕事をしています。入所施設は基本的に24時間体制なので、保育士はシフト勤務で夜勤もあります。
施設内で子どもの学習支援をする
小中高生は宿題があるので、必要に応じて保育士がサポートします。
入所している子どもの健康管理を行う
保育士は子どもの体調を毎日管理し、感染症の予防や受診同行を行います。
子ども周辺の安全管理に配慮する
保育士は施設の危険個所を点検し、避難訓練等を定期的に行います。
子どもの家族と連絡をとりあう
保育士は保護者に子どもの様子を伝えるとともに、生活状況や学習状況を報告します。
施設内イベントの運営またはサポートを行う
施設で行う年間行事の計画と運営を行います。子どもたちが運営に携わる時は保育士がサポートします。
子どもの金銭管理をサポートする
自分のお金を管理できるように、買い物の計画やこづかい帳などの指導を行います。

子どもの日常生活全般をサポートするのが保育士の仕事カモ!保護者の愛情を満足に受けられなかった子どももいるので、保育士は温かい雰囲気で支援するよう心がけています!
福祉型障害児通所施設について具体的に知りたい!
福祉型障害児通所施設では「児童発達支援センター」として障害児支援を行っています。児童発達支援管理者、児童指導員、保育士、嘱託医などの資格をもったスタッフが、下記のようなサービスを提供しています。
児童発達支援センターで受けられるサービスとは?
児童発達支援センターでは下記のサービスを子どもと保護者に提供しています。サービス提供時間は9時から15時までの4~5時間程度。センターによっては短時間のクラス(2時間程度)もあります。子どもの状態に合わせた時間設定を行っています。
子どもの将来をふまえて発達支援を行う
- 本人の特性や発達状況に合わせて「生活・運動・認知・コミュニケーション・人間関係」などの領域において支援を行います。特に盲ろうあ児については、点字や手話などのコミュニケーション手段を活用します。
- 保育園等に移行する際の支援を行います。情報を共有し、移行後も保育園への支援を続けます。
- 就学後も「放課後デイサービス」を利用できます。
通所している子どもの保護者を支援する
- 子育てのストレスを軽減させるための相談支援を行います。
- ペアレント・トレーニング等を実施し、家族全体を支援します。
- 子どもの発達への理解について、保護者の状況に合わせて支援します。
- 必要に応じて保護者の心理カウンセリング等を行います。
児童発達支援センターで働く保育士の仕事内容は?
保育士は児童発達センターでどんな仕事をしているのでしょうか?主なものを挙げてみました。
基本的生活習慣の援助や指導を行う
衣服の着脱、トイレ、食事、自分の持ち物の管理など、なるべく自分のことは自分で行うことができるよう支援します。
運動や絵画制作などの活動を支援する
個人の発達に合わせて運動遊びを行います。製作に必要な道具の使用法やコツなどを伝えて、スムーズに作業ができるよう支援します。
療育やトレーニングなどを支える
専門のスタッフによる訓練等を行う場合は、必要に応じて保育士もサポートを行います。
子どもの自由遊びを見守る
子どもが好きな遊びを楽しめるよう環境を整え、遊んでいる様子を見守り、時には一緒に遊びながらコミュニケーションをとるようにします。
保護者への対応を行う
受け入れ時には子どもの情報を聞き、帰る時には一日の様子をていねいに伝えるようにします。保護者が気になっていることなど、必要に応じて相談も行います。

児童発達支援センターの「一日の流れ」は保育園と共通することも多いですが、障害特性をふまえた保育を行うので「配慮するポイント」が多くなるのが特徴カモ!相談支援も、保護者自身の「障害の受容や理解の仕方」が左右するので、保育士は慎重に対応することが求められます!
障害児入所施設と児童発達支援センターではどんな保育士が求められる?
子どもひとりひとりに寄り添うという「保育士としての基本姿勢」はどんな職場でも同じです。特に、障害児の場合は意思の疎通がうまくいかないことも多いので、「子どもが何を感じているか」を観察し、じっくり考えることが保育士に求められます。
また、障害児施設だからこそ求められる下記のような条件もあります。「必須」ではなくても、条件を満たしている保育士の方が採用されやすいというメリットがあります。
障害をよく理解している保育士
保育士は、対象となる子どもの障害について充分な知識があり、継続的に勉強していることが望ましいですね。関連するテーマのセミナーや研修会にも積極的に参加したり、地域の現状にも関心をもっている保育士は「障害児保育への意欲」が感じられます。たとえ勤務経験がなく座学だけだとしても、知識があると業務の理解がしやすいので仕事を覚えるのが早くなりますね。
障害特性に合ったスキルをもっている保育士
盲児やろうあ児の支援をしたいと考える人は、特性に必要な「スキル」をもっていると現場で重宝します。盲児には「点字」などの知識とスキル、ろうあ児には「手話」のスキルが、転職後には必ず必要になりますので、事前に勉強しておくことをオススメします。スキルが身についている人は、施設側にとって即戦力!採用面接ではとても有利なのです。

障害者施設が一元化されたことで、保育士もさまざまな障害の子どもを保育するようになりました!どんな子どもにもオールマイティーに対応できる「柔軟性」が、これからの保育士には必要カモ!
盲ろうあ児施設に転職したい保育士は何をめざせばいいのか?
もともと「盲ろうあ児施設」の数はとても少なく、保育士が転職したくても「地域に施設がない」「求人がほとんど出ない」という状況でしたが、障害児施設の一元化により「盲ろうあ児の受け皿」が増えたことで、保育士が転職できるチャンスも広がったのです。
ただ、転職先の幅が広がるのはうれしいけれど「盲児またはろうあ児だけを専門に保育したい」という希望をもっている保育士もいるでしょう。そんな方にオススメしたいのが、盲学校または聾学校の「幼稚部」または「寄宿舎」での仕事です。対象が「盲児またはろうあ児」に限られるので、希望通りの保育ができるかもしれません。盲ろうあ児保育のスペシャリストを目指すなら、ぜひリサーチしてみてくださいね!
保育士がすべきことは情報収集とスキルアップ!今すぐ始めよう!
盲ろうあ児施設に関心のある保育士は、「盲ろうあ児を含めた障害児全般」を保育したいのか、「盲ろうあ児のみ」を保育したいのか、自分の気持ちを見極めることが必要です。それによって転職活動の仕方もちがってくるのです。
障害児全般の支援をめざすなら、転職エージェントで「児童発達支援センター」の求人情報をキャッチしましょう!盲学校または聾学校をめざすなら、学校に直接問い合わせてみることをオススメします。いずれにしても必要なのは、障害への理解を深めることと、必要なスキル(点字や手話など)をみがくこと!転職をめざす保育士には最も大切なことと言えるでしょう。