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厚生労働省の審査報告書にみるオプジーボのメリットと問題点

オプジーボは決して免疫療法ですが、副作用が少ない薬剤ではありません。日本人での評価も中間検討しか終わっていません

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オプジーボ点滴静注20mg、同点滴静注100mgは2015年11月30日に開催された医薬品第2部会で一部変更承認申請を認められ、平成27年12月7日に薬事・食品衛生審議各薬事分科会で切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対して3割負担(後期高齢者は1割、生活保護家庭は負担なし)で使えるようになりました。本品目の再審査期間は5年10か月とされました。

ピカ新だったら8年じゃないカモ

オブジーボは既に根治切除不能な悪性黒色腫で承認を得ているので、再審査期間はそこから始まっているので上記の期間になっています。薬価に関しては製薬会社が出した原価に18%の利益を認めるという最高の評価に近いものです。

厚生労働省の審査報告書にみるオプジーボのメリットと問題点

厚生労働省の承認条件(審査報告書より抜粋)

  1. 医薬品リスク管理計画を策定の上、適切に実施すること
  2. 国内での治験症例がきわめて限られていることから、製造販売後、一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は、本剤使用患者の背景情報を把握するとともに、本剤の安全性及び有効性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に必要な素一を講じること。

引用元:審議結果報告書

オブジーボは日本の会社が開発したから、治験症例が限られているというのはどういうことカモ

このあたりが日本の治験が遅れているというところかもしれませんが、この薬の開発は小野薬品工業と米国のMedarex社が共同して創製しました。

Medarex社は小野薬品工業とこの薬を共同開発しましたが、開発費用がまかなえるかどうか不明であったのでブリストル・マイヤーズ・スクイブという大手の製薬会社に会社を売りました。

ブリストル・マイヤーズ・スクイブの開発スピードには定評があって、かつては総合失調症のアリピプラゾールを日本の会社が米国で開発を行っていたのですが、あと5年は係るという見込みだったのが、ブリストル・マイヤーズ・スクイブが共同で開発することになると、米国だけでなくEUでも共同開発からほぼ1年で申請にこぎ着けています。

オプジーボも同じで小野薬品工業が日本でもたもたと治験を実施している間にブリストル・マイヤーズ・スクイブが米国で症例を集めて、そのデータを主として日本での追加効能にこぎ着けたというところかもしれません。

オプジーボはなぜ騒がれるカモ

オプシーボが騒がれている理由

まずは作用機序が全く新しいからです。体の中では活性化したリンパ球が、がん細胞を殺す働きを持っていることが分かっていました。

しかし、免疫療法(自分のリンパ球を貯めておいて、がんの治療のために注射するとか、切り取ったがん細胞に対して抗体を持ったリンパ球を注射するなど)が色々研究されましたが、思ったほど効果がありませんでした。人によって、がん細胞はもともと、自分の細胞が変化した細胞だから免疫なんてインチキ療法とまでいう人がいました。

ですが、2010年がん細胞にはPD-L1とPD-L2という受容体があって、その受容体が腫瘍細胞を見つけて殺す作用を持っているT細胞に結合して、そのT細胞を無力化することが明らかになりました。そこでそのPD-L1という受容体にふたをし、腫瘍細胞を殺すT細胞の効果が発揮できるようにしたのがオプジーボです。

今までの殺細胞効果を用いた化学療法や放射線療法に比べて、自分の免疫が発揮できるような体制を作るという点で副作用も少ないことが想定されることと、PL-1が始まって10年も経たないうちに薬ができたことに対する薬学の力でいい方に騒がれています。

悪い方にも騒がれています

確かに従来の化学療法に比べて、延命効果が統計学的に証明されたのですが、2年間の観察期間終了時には患者さんの生存は確認できていません。(途中で薬を止めた人は脱落例として統計計算から除かれます。そのような人は生きているかもしれませんが、薬を止めているのであまり意味がありません)。

つまり、大腸がんみたいに手遅れにならなければ治癒するほどの効果を持った薬剤ではないということです。しかも薬価が月300万円です(1回の治療で考えると800万円)。

患者さんは3割負担ですので、月に払う額の上限は所得によって異なりますが、最大月10万円で済みます。残りはどうなるかというと健康保険料と税金でまかなわれます。

一人月200万円の健保組合と国の負担が増えることになります。例えば1万人の肺がん患者に使われると200万円×1万人で月200億円この薬が健康保険料や税金を使ってしまうということです。

イギリスではこの薬は健康保険では使用できません。ドイツでは今検討中ですが、期待する効果が得られない場合には製薬会社が費用を返還する法案が検討されています。

日本では売り上げが予想以上になった場合には薬価を引き下げる仕組みがあります。しかしこれは製薬会社にとってはやる気をそぐ方法です。大量の開発費をかけて全く新しい薬を作って、たくさんの病気を治すと薬の評価である薬価が下がるのですから。

じゃあどうするの、日本でも製薬会社にお金返してもらうカモ?

これからの日本の対応

オプジーボの効果を冷静に判断すべきだと考えます。腫瘍縮小効果ですが、日本では悪化例が半分近くあります。生存期間の中央値はコントロール群が6か月(95%信頼区間5.17-7.33)、オプジーボ群は9.23か月(95%信頼区間7.33-13.27)です。

つまり今まで余命があと6か月といわれていた人が、この薬を使うと9か月になる可能性があります。この場合患者さんの負担額は月10万程度です。しかし税金や健康な人の保険料に190万の負担をかけてします。この薬を使いますかというインフォームドコンセントをとる…というのは極論です。

そのため医療経済学の観点を持ち込むべきかと思います。医療経済学というのは一人のひとの経済的な側面を考えている人もいますが、決してそうではありません。

今の肺がん治療による平均余命は6か月と想定して、オブジーボを投与して、6か月以下で死亡した場合には薬価分をマイナス、それよりも生存した場合には社会復帰した場合にはその収入から治療費を引いたものを合算します。

これで今までの治療と比べてみるのが医療経済学です(ざっくりとした説明ですが、肝心なところは一人の人間が対象ではなく、実際の治験で医療経済的な視点を加えるということです)

重篤な副作用としては審査報告書では神経障害、腎障害、静脈血栓症、塞栓症、副腎障害、脳炎、皮膚障害、血球貪食性リンパ組織球症が検討されています。

また今回治療した腫瘍のPD-1が存在しているかどうかも検討されています。不思議なことにPD-1の存在にかかわらず生存率が3か月ほど延長した試験もありましたが、症例数の多い試験では10%以下の発現率では生存期間に差がありませんでした。

今までの比較的高価な抗体医薬品は、抑えるべき抗原が発現しているかどうかの検査薬とセットで用いることが使用条件になっています。そのような抗原は血中にも流出することが多かったようですが、PD-L1は腫瘍細胞を採取する必要があるので、実施はまた高価なものになります。

しかし、10%以下では生存期間が標準治療と変わらないことから厚生労働省はどうするのと質問しましたが、申請者は今のところ精密に計ることができないこと、PD-L2との相互作用も考えられるので、時間が欲しいということで、厚生労働省は今後も研究することで承認しました。

またリンパ球の効果を下げることから自己免疫疾患との関連を問われましたが、腎障害、皮膚障害、血球貪食性リンパ組織球症はその恐れがあるが、頻度は低く、丁寧に観察する専門医に使用を絞ることで回避可能と答えました。

厚生労働省とその専門部会は重要な特定されたリスクとして、間質性肺疾患、重症筋無力症、筋炎、重度の下痢、肝機能障害、甲状腺機能障害、神経障害、腎障害を取り上げて、市販直後試験の実施、12か月1000例を目標とした使用成績調査と中間段階のデータが提出されている第Ⅲ相試験の継続試験を実施することによって安全性を確保することを条件に効能追加を認めました。

GCP違反としては、申請概要の審査には影響がないが「重篤で予測できない副作用等の情報のうち一部が、治験責任医師及び実施医療機関の長に適切に通知されていない」ことが明記されています。

よほど事情がなければもう少し待ってから使った方がいいカモ

まとめ

あと1年ぐらいでPD-L2も抑える薬剤が承認される可能性があるのでそこまで待った方がいいかもしれませんね。

(使うかどうかはお医者としっかり議論してください。肺がんは命にかかわる病気ですので、審査報告書を読まれることをお勧めします。本人が高齢の場合は息子さんやお孫さんあるいはその友人で薬学に詳しい人に呼んでもらって意見を聴くのも一つの方法ですし、見分けるのは難しいですが第三者的な目を持った医者にセカンドオピニオンを求めることもお勧めです。)