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医薬品のネット販売問題。薬剤師が取り組むべきこととは?

医薬品のインターネット販売について、今後薬剤師が取り組むべきこととは?

薬を生業とする薬剤師にとって、医薬品のインターネット販売については、大変気になるテーマなのではないでしょうか。

人々が自らの健康に責任を持ち管理する「セルフメディケーション」が推奨されている昨今では、健康や美容、また程度の軽い症状改善を目的に、インターネット販売で購入した医薬品を活用するシーンも、増えてきたように感じられます。

ここでは、医薬品のインターネット販売に焦点を当てて、その経緯や、メリット・デメリット、また、多くの方に利用される理由、そして、今後薬剤師が取り組んでいくべきことについてをお話しします。

薬剤師として、時代にマッチした活躍を果たすためのヒントを紹介しますので、ぜひ今後の働き方を定める参考にご覧ください。

医薬品のインターネット販売解禁までのながれ

そもそも旧薬事法では、医薬品の販売方法に関して厳密な規制が存在していました。ほとんどの医薬品は薬剤師などの専門家が対面で販売しなくてはならず、インターネットで販売可能なものは、ごく限定的な薬に限られていたのです。

ところがこの規制に対して、下記の様な実態から「現実的ではないのでは?」という批判的な声が上がる様になりました。

  • 薬を使用する方々の生活へ、インターネットの利用が深く浸透していること
  • ネット販売が一般的に広まっていること
  • 医薬品のニーズがこれまで以上に大きくなり、手軽な入手方法が求められていること
  • 当時の薬事法で「対面で販売しなくてはいけない」と規制しているにも関わらず、実際には店先に薬剤師がいない状態でも医薬品が販売されているケースがある実態
  • などなど…

健康食品や医薬品のインターネット販売を扱う「ケンコーコム」や「ウェルネット」は、このような医薬品の通販事情をとりまく厳正な取り決めを不服とし、厚生労働省による省令の取り消しを求める行政訴訟を起こします。

その結果、2013年1月、「ケンコーコム」、「ウェルネット」は勝訴し、最高裁は医薬品のインターネット規制が無効であると認めました。

これを受けて翌年の2014年6月には、医薬品のインターネット販売について新たなルールが定められることになったのです。

改正された薬事法では、医薬品のインターネット販売に関わる規制がおおきく和らげられ、現在では多くの方が気軽にインターネット上で医薬品を入手することが可能になりました。

医薬品のインターネット販売、メリットとデメリットを知ろう!

患者さんや消費者の方々にとって、これまで薬剤師と対面で購入しなくてはいけなかった医薬品が、インターネット販売で手軽に入手可能になった事には、とうぜん大きなメリットをもたらしています。

ところがその反面、薬剤師として見逃す事のできないデメリットも多く存在しいている様子ですね。

薬剤師関連のコラムや記事では「インターネット販売でのデメリット」ばかりがフィーチャーされがちですが、利用者目線で理解するためには、欠点ばかりではなく利点もしっかり把握しておく事が重要です。

メリットについて…

  • 販売箇所や営業時間に縛られる事なく、手軽に購入する事ができる(仕事による時間の制限や、離島などで暮らす方にとっての、手間や煩わしさを解消することにつながる)
  • 自宅や希望場所まで、医薬品を届けてもらうことができる(身体的な問題や、住んでいる場所による問題がある方の不便を軽減することにつながる)

インターネット通販で購入する方の多くが、「手軽さ」にメリットを感じています。医療機関や店舗まで足を運ぶ必要がないうえに、24時間いつでも注文することが可能なので、人々の生活スタイルが多様化している現代に、ぴったりな購入方法なのカモしれません。

また、商品を取り扱うサイトや業者は複数存在しいているため、価格面や送料の有無、ポイントの還元率などを考慮して、よりかしこい購入方法を選択できる点も、メリットとしてあげられるのではないでしょうか。

複数の薬局やドラッグストアーを見回ることは大変ですが、インターネットであれば自宅にいながら見比べることが可能です。

デメリットについて…

  • 偽造薬や不良品、未承認薬などを取り扱っている違法なサイトもある(中には、送金や支払いをしたにも関わらず、商品を送ってこない悪質な業者の存在も…)
  • 患者さんや消費者の方々の中には、不適切な服用や、薬の乱用をしてしまう方もいる(常用薬との飲み合わせや、症状・体質にマッチした薬のチョイスには、やはり薬剤師による専門的な知識が必要なシーンも多い)

2017年9月に公表された、厚生労働省による買上調査の報告では、2016年1月〜3月にインターネット上で広告・販売されていた製品を購入し分析したところ、健康食品98製品のうち、63製品から医薬品成分が検出された…とのことでした。

くわえて、海外製医薬品だと謳う16製品のうち、外箱等の包装や添付文書がない製品は2製品、表示より医薬品成分の含有量少ない製品が1製品見つかったそうです。

※参照 インターネット販売製品の買上調査pdf

インターネット販売をしているサイトや企業の中には、定められたルールを守らず違法な販売を行うケースも数多く存在しています。

場合によっては、健康被害につながるものや、支払いや送金をしたにもかかわらず商品が届かない…という詐欺に遭遇してしまうリスクもあるでしょう。

上記(『メリット』)では、より安く購入できる選択肢を選ぶことが可能…という利点を紹介しましたが、このメリットはサイトの安全性を見定めることができない場合、悪質な通販サイトの利用につながる可能性もはらんでいます。

さらに、いくらルールを守った適正な医薬品であったとしても、患者さんや消費者の方々が独断で医薬品を利用することには、相応のリスクが生じるでしょう。

「薬も過ぎれば毒となる」という言葉が示す通り、用法や用量を正しく守らなかった場合、薬の効果が十分に発揮されないばかりか、かえって身体に害となるリスクも存在します。

また、常用薬との飲み合わせについてや、副作用の可能性があるケースも珍しくはありません。

このように、医薬品のインターネット販売の利用には、違法サイトの被害に遭うリスクや、医薬品の不適切なチョイス・服用につながる可能性が存在しているのです。

どうして、人々はインターネット販売で医薬品を購入しようとするのか?

今更感のある根本的な問題ですが、そもそもなぜ、これほどまでに多くの方々が、医薬品の購入でインターネット販売を利用したい!と感じる世の中になったのでしょうか。

  • 「薬局や店頭まで足を運ぶのが煩わしい」
  • 「医療機関まで行くのが大変、できれば診察しないまま医薬品が欲しい」
  • 「できるだけ安価に、かしこく医薬品の購入を叶えたい」
  • 「症状や持病にコンプレックスがあり、医薬品の購入も内密にしておきたい」
  • などなど…

その理由は様々ですが、すべてのケースに共通しているのは、違法な販売サイトや、医薬品の不適切なチョイス・利用によるリスクよりも、「インターネット販売で得ることのできるメリット」の方が勝っていると感じているポイントにあるのではないでしょうか。

しかし、医薬品のインターネット販売解禁に始まり、インターネットを通じて医薬品を購入する方が近年増加しているという現状は、薬剤師にとって実に由々しき事態です。

2013年1月の判決で、最高裁が「医薬品のインターネット規制が無効である」と認めた…ということは、すなわち「医薬品の販売シーンにおいて、薬剤師の存在や説明は不要である」と世間が認めたということにもつながります。

事実、インターネット販売に限らず、昨今では多くの方が、医薬品の購入時に薬剤師からの指導や助言を受けていない・求めない現実があるのです。

店頭やインターネットでの医薬品購入において、もはや薬剤師の存在にありがたみを感じている方はマイノリティだと言っても過言ではないでしょう。

本来薬剤師が担っているはずの「国民の健康、衛生、安全をサポートする」という役割は、もはや患者さんや消費者の方々側にしてみれば単なる「建前」になってしまっているのカモしれません。

医薬品インターネット販売時代に際して、わたしたち薬剤師がするべき事とは?

とはいえ、上記(『医薬品のネット販売、メリットとデメリットを知ろう!』)で紹介した通り、医薬品の購入でインターネットを利用することには、患者さんや消費者の方々の健康状態へ悪影響を与えかねないリスクが存在していることも確かです。

利便性を活かしつつ、安全に使いこなすためには、薬のプロフェッショナルである薬剤師の存在が不可欠なのではないでしょうか。

たとえば薬局で働く薬剤師の場合は、服薬指導や窓口での対応で、またドラッグストアー薬剤師であれば、店先で行う接客などで、インターネット販売に潜む多様なデメリットや対策法についてをお知らせすることができるでしょう。

また学校薬剤師の場合は、学生へ向けて違法サイトの見極め方をレクチャーしていくなどのアクションが考えられます。

インターネット通販が医薬品にも広がっている時代だからこそ、専門家である薬剤師は、現代にマッチしたアドバイスや指導を積極的に行うべきなのではないでしょうか。

また、インターネットで薬を購入する際に「そうだ、薬剤師へ相談してみよう」と思い出してもらうためにも、人々が忘れかけている薬剤師の役割や重要性を、再度認識してもらうことが重要です。

そのためにも、インターネット通販に関わるシーンだけでなく、普段のコミュニケーションや対応で「薬剤師に対応してもらうことのメリット」をアピールすることも忘れるべきではありません。